あるさんち。

インターネット牧場。

境井仁は二度死ぬ。~Ghost of Tsushima~

ゴースト オブ ツシマ、めちゃ面白かったです。

 少しずつ進めてきたゴースト オブ ツシマですが、ついにコトゥン・ハーンを打ち倒したのでツシマを巡る長い旅がようやく一つ区切りを迎えました。

 

 このゴースト オブ ツシマというゲーム、サムライステルスのアクションゲームとして面白いのはもちろんなのですが、その物語そのものというか、境井仁をはじめとする登場人物の気持ちが揺れ動く様も深く作りこまれていて、なかなか目が離せません。

 侍ゲームでありステルスアクションでもあるということが、実は物語に落とし込むときには矛盾を生むのだということを、ゴーストオブツシマは提示してくれました。

 その生まれた矛盾にマッチさせた物語構造。とてもとても良かったです。

 

 それ故にというか、物語が良いからこその不満点が一つだけありまして。
 ストーリーを進めるうえでクエストが細切れにされているんですけど、物語の途中で水を差されたような気分になるんですよね。

 仲間に関するサブストーリーもそうなんですけど、ちょっと移動してちょっと戦闘、ちょっと移動してちょっと戦闘、の繰り返し。物語にのめり込んで一気に進めたい気持ちがあるのに、ちょっと戦闘したらストーリークリア画面みたいになって集中が切れちゃうような。

 

 ゴーストオブツシマかなり面白かったんですけど、その細切れ感だけが少し残念だったかなって。

 

 メインストーリーの節目節目でガッツリ長いステージがあるんですけど、その時は次から次へと手強い敵が出てきてめちゃめちゃ気持ちが昂るんですよね。

 これだよ!こういうのもっとやらせてよ!!っていう気持ちになっちゃうから、余計にその細切れ感が残念に感じちゃう。メリハリだと言えば聞こえはいいけれど。

 

 そうは言ってもストーリーはかなり好きだったので、このサムライステルス(侍とステルスという相反する物)のシステムと物語の噛み合い具合を紹介させてください。

 境井仁、一度目の死

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 物語は蒙古帝国が海から攻めてくるシーンから始まります。

 

 広い海を埋め尽くすほどの船数で押し寄せてくる蒙古の軍勢に立ち向かうツシマの武士たち。

 蒙古の将軍コトゥン・ハーンの策略によって武士のほとんどが命を落とします。境井仁もそのうちの一人です。

 

 しかし境井仁は黄泉返ります。

 

 近くの集落にいた"ゆな"に命を救われ、島民のため蒙古を打払うことを誓います。
 一度は失ったその命で、島民を護るためにたった一人で戦おうというのです。

 

 ここからなんやかんやあって、捕虜にされている志村殿(偉い人、境井仁の叔父で恩師のような存在)を助けに向かうんですけど、その道中で志村殿との思い出のシーンが流れるんですよ。

 

 

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 武士たるもの正々堂々と戦うものだ。

 

 この志村殿の「武士とはかくあるべし」という教えが、この先の境井仁の戦いのなかで一種の呪いのような存在になっていきます。

 幼い頃の境井仁もその武士道の教えを疑うことなく真っ直ぐに育ちました。蒙古との戦いで一度死んだとはいえ、「俺は誉れ高き武士なのだ」という矜持が境井仁の背中を後押ししてきました。

 

 たった一人だろうと蒙古の軍勢が何万人居ようとも、武士たるもの刀一本で正々堂々真正面から戦うものなのだ、と歩みを進めます。

 

 

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 仲間の"ゆな"が止めても、正面突破をやめません。
 何故なら武士は正々堂々と戦うものなので。

 

 それでなんやかんやあって志村殿救出作戦は失敗して、次は"ゆな"の弟を助けに行くことになります。

 志村殿を救い出し立て直す必要があるからそんな悠長なことしてる場合じゃないとはいえ、なんといっても命の恩人である"ゆな"の頼み。

 弟を助けに向かいました。

 

 そして、ここで境井仁の武士道は終わります。

 

 敵陣を見つけるや否や、正面から乗り込もうとする境井仁。

 さすがに今回は弟の命が掛かっているので、"ゆな"は強めに止めるんですよね。

 

 頼むからこっそり忍び込んでくれ、騒ぎになったら捕虜の弟が殺されちゃう。

 命の恩人の頼みとあっては、境井仁も武士道を曲げざるを得ません。

 

 この後、境井仁の戦いの火ぶたが、切って落とされました。

 

 

境井仁、二度目の死

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「騒ぎにならないように暗殺して……」

 

"ゆな"の提案を受け、境井仁は懐の小刀を抜きます。

 

脳裏に浮かぶのは、恩師であり育ての親である志村殿の厳格な顔。

正々堂々と戦え。それこそが誉れ高き武士のあるべき姿だ。

 

何度も何度も教え込まれた言葉。

それこそが唯一無二の生き様なのだと信じてきた言葉。

一度たりとも疑ったことのない、これまでの人生を支えてきた言葉。

 

 

その教えを、己が握りしめた小太刀で、切り裂きます。

 

 

 

 

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「ああ、とうとうやってしまった……」という顔です。


志村殿の言いつけを破ってしまった後悔なのか。

それとも生き様を曲げねば人ひとり救い出せない己の弱さを嘆くのか。

 

何も気づいていない敵兵の後ろから忍び寄り、首筋に小太刀を突き立て。

声を上げさせないように。

 

それは卑劣で、外道のようで、とても誉れ高き武士の戦い方ではありません。

 

 

この瞬間『誉れ高き武士としての境井仁』は死にました。

 

 

もう後はやるしかありません。

誉れで飯は食えません。

 

境井仁の故郷であるツシマを、そしてここで生きている島民を護る。

こうして冥人・境井仁の新たな人生が幕を開けるのです。

 

先にあるのは修羅の道か蛇の道か。

それとも誉れある武人の道か。

 

光と影の狭間に揺れ動く、風に舞う紅葉のようなおぼつかない足取りで。

ただただ護るべき島民のために、歩を進めていくのでありました。

 

 

 

 というわけで、ここまでがゲーム開始から2時間かからないくらいのストーリーです。他の仲間たちのサブストーリーも『二律背反』のテーマが流れているような苦悩のストーリーでいい感じでした。

 とくに昔馴染みの竜三と展開する物語はめちゃめちゃ熱いものがあります。めちゃめちゃ竜三好きなんですよ。もうほんと格好いい。

 

 ゲームのアクション部分は操作性含めて当たり前のように面白いので、今回はストーリーの部分を紹介させてもらいました。

 

 面白いのは、敵の拠点を攻略してる最中とかに暗殺攻撃を繰り出すと、たまに志村殿との思い出のシーンが流れてきて「武士なら卑怯な戦い方するな!」って怒られてるみたいになるんですよね。

 用意されたシステムをプレイヤー側が自発的に縛りたくなるような仕組み、ちょっと笑っちゃいました。

 

 アップデートでオンラインマルチの「Legends/冥人奇譚」が発表されましたけど、とりあえずそこに間に合うようにストーリークリア出来てよかった~。